第2回はこちら
ご注意
- この記事は、ヴィード語の解説及び学習の目的を放り投げて聖キューレ協会のドタバタをお楽しみ頂くためのものです
- この記事では聖キューレ協会のメンバーが便宜上日本語を話しており、且つ現世の言語の例を提示します
登場人物紹介
聖キューレ協会のリーダー
ミュリージャ王国のお姫様
厄介言語オタク 医者の娘
南方の狩猟民
謎の東洋人
taksh el lun ar pait? veng eriir myya!
あ、あの、まずは私たちが分かる言葉でお願いします…
おーゴメンなさいデスね。皆さん飯食ったデスか?聖キューレ協会所属のミューアデース!今日はワタシの故郷の言葉を紹介したいと思うデス!
新しい言葉を学ぶのは心が踊りますわ
で、お前が話すのはなんていう言語なんだ
え、言葉は言葉デス、単にviidとか、viid erieriirとかしか言わないデス。あっerieriirは「我々」って意味なので言葉の名前とかではないデス
じゃあ"ヴィード語"で良いだろう。名前はあった方が便利だ
"言葉語"ってなんか変デス
その言語に名称がない場合はその言語の「人間」という単語を使って"人間語"って言う場合もありますね。ミューアさんの言葉で「人間」はなんといいますか?
tavengと言うデス
「タヴェン語」より「ヴィード語」の方がかっこいい
どっちでもいいデス
じゃあヴィード語で
はい
では気を取り直して、最初は音について見ていくデス。言葉の基本は音デス
挨拶とかよく使うフレーズとかじゃなくて、音からなんですのね…
まずは母音ネ。表を用意したので見てみてほしいデス
いや見ても分からぬが
普通そうですよね。これを見て分かる方であればこんなじれったくて冗長な記事読むよりこっち読んだ方が早いです…
この記事の存在を根本から否定しないでほしいデス
じゃあ解説を入れていくデス。表の中の左側に書いてある文字は綴るときに使う文字で、スラッシュの中がその綴り字が表す実際の音になるデス。ローマ字読みとも違う音があるから注意するデス
例えばつまり、vengと綴ってあっても単純に「ヴェング」とは読まないという具合だな
そうデス、例えのチョイスが良いデスね。vengはカタカナで表すなら「ウォン」が一番近いと思うデス
そうそう母音の話だったデス。まずは i と u デスね。これは日本語と一緒だと思ってくれればいいデス
i はイと同じで良いとして、日本語のウはこんな記号(ɯ)で表されてるんですの?
日本語、特に東京方言ではウと言うときに唇をあまり丸めずに、むしろ横に引くまでありますよね?汎言語的な傾向としてのいわゆる u というのは唇を丸める音なので、あまり唇を丸めないどころか横に引く日本語のウはɯで表されるのが慣例なんです
日本語の話すると厄介オタクが湧くのでほどほどにしてほしいデス。あっヴィード語の u は日本語のウよりもやや唇を横に引いてあげるとよりそれっぽく聞こえるデスが、まぁこまけぇこたぁ気にしなくていいデス
さて、ここからは全部日本語の母音には無い音デスね
表を見てて思いましたけれど、a i u e o以外に y も母音なんですの?
そうデスね、y も母音デス。なのでヴィード語は母音が6つあることになるデス。 y は、なんて言ったらいいデスかね、イーって言いながら唇をすぼめていくとこの音になるデス。英語にはこの音ないデスよね
ドイツ語の ü なんかで有名な音ですよね。デンマーク語とかフィンランド語とかにも y があってヴィード語と同じ音ですね。一応中国語にもあったりします
ヒュッゲ(hygge)の「ヒュ」とか、ロウリュ(löyly)の「リュ」とか、緑一色(リューイーソー)の「リュ」とかの音だろうか
そう、それです!
ということは、日本語の小さい「ゅ」と考えてよいだろうか
いやそれはあまりにも暴論では…。日本語の小書きのゃゅょは別の母音を表しているわけではなく口蓋化の如何を表しているのであって非円唇前舌狭母音を表しているわけではないというか……!いやでも確かに緑一色lǜ yī sèのlǜは確かに[y]ですけど日本語では違うっていうか、あーもう!!!
話をとっ散らかすのやめて欲しいデス
音なんてそれっぽく聞こえれば細かいことはどうだっていい……
ハイ、続けるデスよ。次は a /æ/デス。これは英語にあるデスね。catとかappleとかの「広いa」って言われてるやつデス。エの口の形でアと言うとこの音が出るデス
ェア~
毎回思うんですけど、こういう「○○の口の形で○○と言う」って説明するとどうしても2音に別れちゃうことが多いんですよね。この説明で適切な音を出せるのは最初からこの音を分かってる人だけなんですよね
ではどうしろと
母音で大事なのって舌の位置と口の形なんですよ。舌面が口蓋からどれだけ離れているか、舌根がどれだけ前後しているか、唇の形が丸いかそうじゃないかの3要素が母音を決定しているんですけど、その3要素を順を追って口の中で作ってあげたらいいと思うんです。で、その3要素というのは国際音声記号、IPAで整理されてるのでわざわざこの母音はこうでこの母音はこうとかこういう風にいちいちやらなくて済むので…
人々はIPAを覚えろ!!!!!
わっ、いきなり大きい声を出さないでくださいまし!
ごめんなさい……
で、結局どうしろと
アの口で舌をちょっと前に出して唇をちょっと横に引いてあげるのがいいと思います
äːa̟ːaːa̝ːæ̞ːæː
おぉ、出ましたね
ハイ次、o /ʌ/デスね。o は、説明が難しいデスね… なんか癪デスけど、カリナ、助けてくれるデスか?
うーんそうですね、/ʌ/は日本の英語教育とかだと「暗いa」なんて呼ばれたりしてます。オの口の丸みを解いてあげるとそれっぽい音が出ますね。それにしても/ʌ/を o で転写するのキツくないですか?/æ/を ä 辺りにして/ʌ/を a にしてあげれば…
ホント口を開けば愚痴ばっかデスね!/æ/と/ʌ/を ä と a で分析するより a と o で分析した方が収まり良いデス!!!!!
まぁ、はい……
ハァ、やっと最後の母音デス。e /ə/デスね。これが一番日本語とかけ離れてて注意しなきゃいけないデス。この音はいわゆる曖昧母音って呼ばれてる音で、ヴィード語ではこれを e で綴るデス
つまり、いわゆる普通の"エ"の音はヴィード語にないんですの?
ないデスね。いわゆる e の音がなくて e と分析される音が曖昧母音になってる言語は現世の自然言語にもいくつか例はあるみたいデスけど、具体例は知らないデスね。人工言語だったら知ってる例はありマスけど
曖昧母音って出すの難しいですわよね。どうしたら綺麗に出ますの?
確かに色々言われててわかんなくなっちゃいますね。口を軽く開けてどこにも力を入れずにリラックスして出すとか言われてますけど、それだとちょっと狭い気がするんですよね。リラックスした口の構えなのは分かりますけど、日本語話者は舌をちょっと奥に引いてやる必要があると思うんです、日本語母語話者の舌の構えってニュートラルでもやや前寄りなので
背中を掌底でどつくとキレ~イな曖昧母音が出るって聞いたことあるデス!
(ドンッ!)
[ə]
……
アー疲れたデス。まさか母音6つ説明するだけでこんなに体力使うとは思わなかったデス……
ふん、体力が足らんようだな。樹海に潜ってレベル上げしてこい
思い出したように世界樹ネタ突っ込まなくていいデス!
初めての樹海探索で死にまくってたのは誰だったかな
ウッ、それは言わないお約束デス……
今回はこの辺で閉めておくか
急に統率力発揮しないでほしいデス!もっとみんな(約1名)が暴走してるときにちゃんと統率してほしかったデス!
私はにぎやかで楽しかったですわよ
我も楽しむことができたぞ
……なら良いデス。次回は子音の解説をして、あわよくば階梯交替の解説もしたいところデス
では、これにて終了
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